佐伯先生の優しすぎる嘘







「このクラスの学級委員さん、資料取りに行くの手伝ってくれませんか?
ええと、学級委員さん…誰だろう…」





ここからは教育実習生にバトンタッチな、と言われて前に出た高坂先生。

こういうのを頼まれるのは慣れているから、はい、と手を挙げようとすると。




「あー、高坂、俺が行くよ。
学級委員、そういう仕事引き受けてばっかりだから」



そう言って立ち上がった佐伯先生は、本当にずるくて。


私が学級委員だっていうのも、覚えてないかと思ってた…。


たくさん引き受けてるから、なんて、そんなことを思ってくれる人は他にいなくて。

佐伯先生はいつだって、私を甘えさせてくれる。



好きだって、思っちゃうよ…佐伯先生。





「大丈夫です、行きます」




嬉しくて、切なくて、苦しくて、じわりと浮かんだ涙をパッと手の甲で払って、立ち上がる。



佐伯先生の顔は、見れなかった。

見たら泣いてしまいそうだったから。