佐伯先生の優しすぎる嘘





「何かいいことあったでしょ」




夕羽の質問に、え、と頬を抑える。



「ニヤニヤ、してた?」

「すごく」

「は、恥ずかしい…」



完全に無意識だったけど、顔は正直に緩んでいたらしい。



「佐伯先生?」

「そ、そう…」


夕羽にはすべてお見通しみたいだ。


「なんか、オリエンテーション以来佐伯先生と急接近してない!?」

「え、そ、そうかな!?」


「そうだよー!
だって佐伯先生、2回も杏奈のこと助けてくれたんだよ?

川で転んだのも風邪ひいてたのも、杏奈のことよく見てないと分かんないって!」



もし、もしそうだったらすごく嬉しい…。



「杏奈のこと好きなんじゃないの?」


でもさすがにそこまで浮かれることもできない…。



「それは…ないよ」


何でよー、とつまらなそうな顔をする夕羽。


だって、私が生徒だから。


好きなタイプは年上。


それが本心だとしても、私を突き放すための嘘だとしても。

どっちにしろ、私は恋愛対象外、ってことなんですよね?