キーンコーンカーンコーン…
「気をつけ、礼」
そうして終わった授業。
私はオリエンテーションで先生に借りていたジャージを持って、佐伯先生の後を追いかけた。
柔軟剤を、いつもの倍くらい使って洗濯した。
Tシャツにアイロンもかけた。
袋も、可愛いブランドショップの袋に入れた。
ちょっとでも、ほんとちょっとでも、可愛いって思われたくて。
「佐伯先生!」
廊下を歩く佐伯先生の背中を呼び止める。
「水島さん」
「あの、これ、ありがとうございました!」
ピンク色の袋を差し出すと、ああ、と受け取る佐伯先生。
「本当に、迷惑ばっかりかけてごめんなさい…」
「迷惑とか思ってないって言ってるでしょ」
本当、どこまでも優しい人だ。
「何か、お礼とか…」
「本当大丈夫だから」
気にするなよ、って笑ってくれるけど。
でも…。
納得しない私の表情を見て、
「じゃあ放課後、図書室で資料探し手伝ってくれる?」
って提案をしてくれる。
「いいんですか!?」
「何で嬉しそうなの」
はは、と笑う佐伯先生。
嬉しいに、決まってるじゃないですか。
佐伯先生と放課後、一緒にいる理由ができたんだから。



