「何ニヤけてるの、行くよ」
そう言われて、慌てて顔を隠す。
「あ、杏奈!大丈夫!?」
「風邪だったの気付かなくてごめんね!」
バスに乗ると、みんなが心配してくれる。
「心配かけてごめんね…ありがとう」
と、夕羽に囁かれた言葉に顔がさらに熱くなる。
『佐伯先生、杏奈を助けに行く時、初めて見るくらい焦ってたよ』
チラリ、と隣に座る佐伯先生を見ると、眼鏡と髪に隠れて表情はよく見えなかった。
みんなが座って、出発したバス。
窓を見ると、私と、佐伯先生の姿が映っていた。
これなら、じっと見ててもバレないかな。
「具合、平気?」
「はい」
「辛くなったら言って」
「はい!」
佐伯先生が隣にいるだけで、なんだかすごく気持ちが落ち着く。
ゆらゆらした心地よいバスの揺れに、眠気が襲ってくる。