佐伯先生の優しすぎる嘘






「っ…馬鹿、何してるの」





そんな声に目を開けると、そこには大好きな大好きな彼で。

…夢かな、なんて思って。


息を切らした佐伯先生の眼鏡は、走ったからか少しずれていて、初めて見る焦った表情をしていた。




「背中、乗れる?」


「はい…」




おんぶしてくれた佐伯先生の背中は、大きくて、温かくて、心地良い。



ねえ、佐伯先生。

どうしていつも、こんなタイミングで助けてくれるんですか?


こんなの、好きにならないほうが無理に決まってる…。



佐伯先生のこの背中が、好きで。


涙でぼやけた視界に映る、その襟足も好きで。


少し上がった息も、好きで。


佐伯先生の全部が、好きだと思った。