佐伯先生の優しすぎる嘘




「怖いねー!」

「暗いね…」




あ、次のペアが来た。
立ち上がらなくちゃ…。


そう思って立ち上がろうとするけど、足に力が入らない。



「っ…」



ぐらり、とふらついた足元。



ードサッ




「きゃっ、何か音した!!」
「に、逃げよう!」



バタバタと遠くなる足音が、うっすらと聞こえた。




「はぁ、はぁっ…」




意識が、ボーッとする。

何で、立ち上がれない…。


体が熱い。

息が苦しい。


…佐伯先生、百合ちゃんを好きにならないで…。




こんな時でも、脳内を占めるのはそのことばかりで。





「っ、はぁっ…」




熱いのに、寒い。


どうしよう、みんなのところ、戻らなくちゃ…。