「ほら、早く戻るよ」
「っ、はい!」
どうしよう、どうしよう、嬉しい…。
頬を抑えると、やっぱり少し熱くて。
少し前を歩く佐伯先生の背中に、抱きついてみたくて。
風に揺れる黒髪が、綺麗で。
「佐伯先生」
ん?
って振り返る、その表情も好きで。
「彼女いるんですか?」
「どうだろうね」
その対応は、慣れてる人の対応。
「好きなタイプはどんな人ですか?」
「年上かな」
面倒くさそうに腕時計を触りながら答えたその回答は、私を遠ざけようとしてるんですか?
「私を好きになる可能性は、ありますか?」
佐伯先生は少し眉を下げて、
「水島さんはけっこう問題児だよね」
なんて笑ってはぐらかした。



