佐伯先生の優しすぎる嘘




と。




「ったく、何してんの」





そんな大好きな声とともに、頭にかけられた黒のパーカー。




「佐伯先生…」




佐伯先生は私の手を引いて川から出すと、私の靴を並べてくれた。



「パーカー、羽織っといて」



その言葉にふと自分のTシャツを見ると。



「っ!」



水で肌に張り付いたTシャツのせいで、下着が透けてる…。

恥ずかしくて、慌ててパーカーを羽織る。

どう、しよう…。

佐伯…先生、見たかな。

見たからパーカー貸してくれたんだよね…。


…どう、思ったんだろう。
いや、どうも思ってないんだろうけど。


テンパっている私とは裏腹に、いつも通りすぎる佐伯先生に、意識されてなさすぎて悲しくなる。




「靴履ける?
あとそれで濡れたとこ拭いて」



そう言って渡されたタオルで、少し濡れた髪や肌を拭く。


…けど。


これ、佐伯先生のタオル…だよね?

髪を拭く時にさり気なく匂いをかぐと、やっぱり大好きな佐伯先生の匂いで。


ドキドキ、する。

佐伯先生はまだ私の腕を掴んだままで。