『卒業生、入場』







学年主任のその言葉で、最後の体育館に足を踏み入れた。



あれから1年。



あっという間に過ぎた1年間は、すぐに卒業という終わりを連れてきた。


3年のクラスの担任は佐伯先生じゃなくて、会えるチャンスは現代文の授業しかなくて。


特に気まずいこともなく、佐伯先生は“先生”として今まで通り接してくれた。


詩織さんと付き合うことになったのかどうかは、よく分からないままだ。



席に座ると、パイプ椅子が少し軋む。



最後の制服。


最後の学校。


クラスの皆とこの場所で集まるのも最後なら、


きっと佐伯先生に会うのも最後だー…。





職員席に座るキリッとしたスーツ姿の佐伯先生に、色々な感情が溢れてくる。




卒業式独特の緊張感と、寂しさ。


この学校には思い出がありすぎて。






卒業証書を貰っても、卒業生や校長先生の言葉を聞いても、歌を歌っても。



これで最後というのが信じられなくて。





号泣している夕羽を見ても、どこか他人事のような自分がいた。