「先生、」


…。



「先生」



…。




職員室の一番窓際。

窓の外では風に乗った桜が舞っている。


ふわりと吹き込んだ柔らかい春の風が、彼の黒くて綺麗な髪を揺らして。

そして私の、肩の下まで伸ばした髪も一緒に。



黒縁の眼鏡が彼の顔に落とす影を、綺麗な寝顔を、もう少し見ていたいと思ったけど。






「佐伯先生、起きてください!」




ここは職員室。
たくさんの先生がいるなかでそんな事はさすがにできなくて。


気持ち良さそうに眠る佐伯先生に少し申し訳なくなりながらも、肩を揺すった。