「…私ね、ずっとお姉ちゃんが羨ましかったんだ」





パスタを茹でながら、桃果がポツリと口を開いた。




「え…?」




「美人で、頭もよくて、なんでも出来て、みんなからも人気者で、しっかりしてて…。


私はしっかりしてないし、頭もよくないし、人の彼氏奪ったとか言いがかりつけられることもあるし。


だからお姉ちゃんはずるいって思ったこともある。



でもね、それを佐伯先生に話したらね…

それぞれ違う良いところがあるんだからお互いに助け合えることもあるんじゃない?って言われたの。


だから私、お姉ちゃんの妹で良かった!」






その言葉に、思わず泣きそうになった。





「私も、桃果みたいにみんなに愛されるのが羨ましかったよ」





そう言うと、驚いた表情。





「桃果が妹で良かった」





「うわーん、お姉ちゃん!」





桃果が思いっきり抱きついてきたと同時に、鍋から沸騰して吹きこぼれるお湯。





「あっ、パスタ!」




茹でていたことを忘れていたパスタを見たら、明らかに失敗だ。





「「あははっ」」






パスタの出来は最悪で、全然美味しくなかったけど。


だけどすごく幸せで。




見えないふりをしていたけど存在していた私たちのわだかまりみたいなものに、佐伯先生は気付いていたのかもしれない。




本当に、どこまでも、ずるいくらいに優しい人だ。