「幸せになってください!」
心から、笑顔で、そう言えた。
振り返った佐伯先生は、いつもみたいに優しく笑った。
その瞳が泣きそうだったのは、きっと私の気のせいだ。
あの時は分からなかった“I love you”の意味。
今ならわかるよ。
大好きだから、愛してるから。
誰よりも幸せになってほしい。
たとえ、隣にいるのが自分じゃなかったとしても。
あなたが笑えればそれでいい。
私、少しは大人に近づけたかな?
ガチャン、と重く閉まった屋上のドア。
その音が合図のように、堪えていた涙が次々に溢れた。
「っ、ありがとう…大好き…」
その声を、温かい春の空だけが聞いていた。



