佐伯先生の優しすぎる嘘







「…別れようか」


「…別れましょうか」







どちらからともなく言った言葉に、苦しいくらい胸が締め付けた。



私じゃないほうが良い。


佐伯先生を幸せにできるのは、今の私じゃない。





佐伯先生の嘘には、気付いてた。



私の成績が下がったのは自分のせいだとか。


東京に行くのに迷うのは自分のせいだとか。



優しすぎる佐伯先生は考えてくれたんだろう。




きっと佐伯先生も、私の嘘に気付いてた。



別れる本当の理由が大学のせいではないこと。



気付いていながら、何も言わない。

私も、何も言わない。





私たちらしい、終わり方だと思うから。