佐伯先生の優しすぎる嘘





いろいろ考えて、たくさん泣いて、答えが出たのは3月の半ばだった。




「佐伯先生、話したいことがあるんです」




そう言った私に、佐伯先生は




「うん、俺もある。

放課後、鍵開けておくから屋上に来てくれる?」





と言った。



これが私たちの久しぶりの会話だった。






「はぁ…」



「大丈夫?」



ため息をつく私を心配してくれる夕羽。



「うん、もう決めたから」





泣くのはやめよう。


佐伯先生のことが大好きだから、私はこの選択をしなきゃいけなかったんだ。







ガチャン





初めて開ける屋上のドアは、思いの外重くて。

いつもは立ち入り禁止のその場所に足を踏み入れるのは、少し緊張した。




フェンスに寄りかかって空を見ている佐伯先生に近付くと、何も言わずにこちらを振り返る。






「…ごめんね」




眉を下げて謝る佐伯先生に、首を横に振る。





「私こそごめんなさい、誕生日…」



誕生日、と言うと少し驚いた表情を見せた。




「…詩織に聞いたの?」



こくんと頷くと、そっか、と答える。