佐伯先生の優しすぎる嘘





「…あの、さ」




「…」



「ごめん、本当ごめん」




分かってる、佐伯先生のせいじゃない。

この状況だって、佐伯先生だけのせいでも、詩織さんだけのせいでもない。


私が佐伯先生をもっと信じてたら、もっと2人がうまくいってたら、こんな不安にはならなかった。



でも、わがままだけど、私を特別扱いしてほしかった。



詩織さんに優しくしないで。


私だけの彼氏でいて。






「何に、謝ってるんですか…」





その気持ちを、こんな可愛くない言葉にしかできない。





「…ごめん」





車は、さっき通ったばかりの道を通って私の家に向かう。


真っ暗な空には、星ひとつ見えない。





キイ、と家の前に止まった車。


何か言いたげな、でも何を言っていいか分からないような。


そんな表情の佐伯先生に気付いてはいたけど、気付かないふりをして車のドアを開ける






「…詩織さんと、付き合ったらどうですか?」







たぶん、1番言ってはいけない言葉を、言ってしまった。