「…私、寝てる蒼にキスした」
その言葉は私の耳に届いたけど、理解したくなくて。
暗闇にやけに響いた声は、私の頭を真っ白にした。
「…は?」
「蒼の家に泊まった時…ごめんね」
佐伯先生はこっちに背を向けているから、表情はわからないけど…。
驚いていることだけは分かった。
「何してー…」
「好きなの…っ」
そのひと言に、佐伯先生の言葉が止まる。
「好きなの、ずっと…
今の私なら蒼のこと幸せにする自信あるよ!
誰よりも蒼のこと好きな自信あるよ!
だから…」
佐伯先生のシャツを握る手に力を入れて、その胸に顔をうずめる詩織さん。
「私に、しなよ…っ」
その声はあまりにも切なくて。
夜空のあまりの暗さに、佐伯先生の心も見えなくて。
モヤモヤした、真っ黒な感情が私の心を支配した。



