佐伯先生の優しすぎる嘘





「私、夜の匂い好きなんです」




少し窓を開けてみると、冷たい風が頬をきる。

夜の、冷たくて、少し切ないこの空気が好き。




「ああ、ちょっと分かるかも」


「分かりますか!?」


「うん、俺はなんかホッとする」


「ホッとするんだ…」





私はどちらかというと少し寂しくなる方だから、よく分からない。

でも、分かりたいなぁ…。


佐伯先生のこともっと、知りたい。





「でもやっぱり寒いですね」



車の窓から吹き込む風は思いの外冷たくて、窓を閉める。




「どこに夜景見に行くんですか?」


「んー、穴場?」




なんて笑う佐伯先生の横顔が好きで。

佐伯先生の後ろ、窓の外の暗闇に何故か不安になって、目を伏せる。




最近の佐伯先生は、前よりもっと掴めなくて。


どこが、って上手くは言えないけど、もしかしたら私の勘違いかもしれないけど。


付き合う前より、掴みどころがない。


少し目を離したら消えてしまいそうで、ずっと見ていても見失ってしまいそうで。




…何で、なんだろう。


その答えはずっと、出せないままだ。