佐伯先生の優しすぎる嘘





「あの、もう少しだけ遅くなっても良い…?」



恐る恐る聞くと、少し怒った声が返ってきた。



『何言ってるの、明日も学校なのよ?
お家の方にも迷惑だからやめなさい』




どうしよう、帰りたくないよ…。

迷っている私に、


「帰りなさい、俺は大丈夫だから」



そんなことを言う佐伯先生にはきっと、何もかもお見通しだ。




「…今から帰ります」




電話を切って、帰る支度をする。

だけどやっぱり佐伯先生が心配で、帰るのを躊躇ってしまう。



「送って行くから帰るよ」



コートを羽織り、車のキーを持った佐伯先生に驚いて、全力で止める。




「寝てなきゃダメですよ!
倒れたの忘れたんですか!?」



「もう寝たから大丈夫」



「私が心配で大丈夫じゃないです!」


「俺だって暗い中1人で帰らせるとか心配で大丈夫じゃないよ」




お互いにこれだけは譲れない、と言い合っていると、急にチャイムが鳴った。




少し面倒臭そうな佐伯先生が、モニターでドアの前を確認する。





と、そこに立っていたのは優しいキャラメル色のコートを着た詩織さんだった。