佐伯先生の優しすぎる嘘





結局、課題のプリントもほとんど埋められないまま提出して、窓の外を見る。


…大丈夫かな、佐伯先生。




「杏奈、平気?」


心配してくれる夕羽。



「どうしたらいいと思う…?」


「うーん…病院にいるかもしれないし、電話はやめたほうがいいんじゃない?

メッセージだけ送っておくとか…」


「…そうだよね、ありがとう」




そっか、病院だったら電話出られないよね。


そう思ってメッセージに切り替えたけど、なんて言っていいのかわからない。



悩みに悩んだ末に、


【大丈夫ですか?
家にいるなら、良かったらご飯とか作るので、落ち着いたら連絡ください】



とだけ送ってスマホを鞄に入れた。



「どうしよう、私、佐伯先生に無理させてるかもしれない…」




ポツリと呟くと、夕羽が驚いた顔をしてこっちを見た。




「何かあったの?」




詩織さんの話とか、進路の話とか、話し始めたらキリがなくて。


だけどなにも言わずに夕羽は話を聞いてくれる。




「私、佐伯先生の負担になってるかな?」




いざ口にすると泣いてしまいそうになる。



「…本当、佐伯先生と杏奈って似てるね」




「え…?」





「今だって杏奈、佐伯先生のことばっかり考えてるでしょ?

佐伯先生も同じなんじゃない?」




「…」




「佐伯先生だって杏奈のことが1番大切なんだよ」




それは、もちろん嬉しくて。


私のことを考えてくれるのも、優しくしてくれるのも、本当に嬉しくて。



「でも私は佐伯先生のこと好きだから、無理して欲しくない…」




子供の私には、まだ佐伯先生を支えることすらできないのかもしれないね。