でも、佐伯先生の手は腕時計を触っていて…、まあそれが確実に嘘の証拠だというわけではないんだけど。
「…佐伯先生、何かありましたか?」
「え、」
「…悩んで、ませんか」
眉を下げて少し切なそうな表情の佐伯先生は、悩んでないよって笑った。
…やっぱり、私には頼ってくれない。
私が頼りないから?
佐伯先生が優しすぎるから?
それとも、私に言えない悩みだから?
どれもあると思った。
詩織さんのこと考えてる?
私のこと考えてる?
わからないけど、でも…。
“蒼は優しすぎるから”
その言葉の意味に、どんどん気付いてきてしまって。
とにかく早く、大人になりたくて。
「佐伯先生」
「…っ、」
佐伯先生のネクタイを引いて、唇を重ねた。
一瞬驚いた佐伯先生は、すぐにいつも通り落ち着いて私を離した。
「どうした?」
その優しい声に、こんなつもりじゃなかったのに涙が溢れて止まらなくなってしまう。
「っ、…」



