佐伯先生は少し考えてから口を開く。
「…やりたいことがあって大学に行くのは、一番いいことだと思うよ。
でも大半の人はやりたいことを見つけるために大学に行くんだと思う。
レベルの高い大学に行くことは、やりたいことの選択肢を広げてくれるよ」
その言葉はストンと私の心に落ちて。
ああ、やっぱりこの人は“先生”なんだな、と思った。
「あのさ、俺のことはー…」
佐伯先生が何かいいかけた瞬間、小さく空いていた窓からサァッと吹いた風。
その風に舞い上げられたプリントが、ふわりと宙を舞った。
ゆらゆらと風に揺れながら舞う白いそれは、なんだか佐伯先生みたいだ。
ふわふわして、掴めなくて、掴んだと思ったらまた見えなくなってしまう。
ゆっくり床に落ちたプリントを佐伯先生が拾った。
「…何、言おうとしたんですか?」
そう聞くと、佐伯先生は首を振って
「何でもない」
と答えた。



