「じゃあ、そろそろ帰る?」
「あ…」
時計を見ると7時を回っていて、もうそんな時間か、と俯く。
「そんな顔するなよ、送ってくから」
眉を下げて笑う佐伯先生に、抱きつきたい。
そんな衝動が私の中にあって、だけど恥ずかしい自分もいて。
「何、寂しい?」
からかうように聞く佐伯先生に、ぎゅっとくっついた。
「…寂しい」
佐伯先生の胸に顔を埋めながら言うと、そっと抱きしめ返される。
「そんな可愛いこと言わないでよ」
少し掠れた声で呟いた佐伯先生は、私の顎をクイっと上に向ける。
そのまま指でゆっくりと焦らすように、私の唇をなぞりながら
「…彼氏の部屋でそんなこと言って、どうなるか分かってる?」
眼鏡の奥の妖艶な笑み。
私の唇に触れる綺麗な指先。
私の腰に回ったままの腕。
カチ、カチ、と時計の音だけがやけに大きく玄関に響く。



