佐伯先生の優しすぎる嘘





「はぁ…」




全然眠れなかった。

次の日の朝起きても、昨日のことが頭をぐるぐる巡って眠れない。



私、今まで自分のことばっかり考えてたかもしれない。

大人な佐伯先生に追いつきたくて、ちゃんと考えられていなかったかもしれない。




だけど私はやっぱり子供で、たとえ佐伯先生のためだとしても、佐伯先生と別れるなんてしたくなくて。



眠いまま受ける授業に、数学の先生の声も耳に入ってこない。





「そうだ、水島」




授業が終わって、数学の先生に呼び出されたので廊下に出る。





「進路調査、まだ出せないか?」


「…すみません」







できればいい大学にも行きたいし、私は東京の大学を受けるって、どの先生も思っていただろう。


ずっとここにいたら、東京に行かなかったら、いい大学といっても限度がある。


だから東京に行くのが私にとっては1番良いんだろう。

その思いはあるんだけど、私はまだ踏み切れずにいた。





「何を迷ってるんだ?」


「…」



何も答えられない私を見て、先生は


「まあ、急かしても仕方ないな。
後悔のない選択をしなさい」


って言ってくれた。


…後悔のない、選択か。