“人のことばっかり考えるな”
佐伯先生はいつも私にそう言った。
佐伯先生も、同じなのかもしれない。
同じだから、私の気持ちが分かるのかもしれない。
同じだから、私も佐伯先生に惹かれたのかもしれない。
人のことばかり考える私のことばかり、佐伯先生も考えているのかもしれない。
私は佐伯先生の前では素直に甘えられる自分でいいんだって思ってた。
だけど、私は佐伯先生の力になれてる?
無理ばっかりさせてるんじゃない?
誰かに見つかるのが心配な私に気付いて、車でイルミネーションに連れて行ってくれた。
詩織さんの存在に不安になったときだって、夜なのに、仕事で疲れてるはずなのに電話してくれた。
そんな佐伯先生に、私は何を返せているんだろう。
「…杏奈ちゃん、どうかした?」
詩織さんの声にハッとして、無意識に俯いていた顔を上げる。
「何でも、ないです…」
「…私ね、前より少しは大人になった今なら、蒼を支えられる気がするの。
周りのことばかり気遣って、本当は誰より弱い蒼のこと、大切にできると思う」
その言葉に私は何も言えなくて、ただ太陽が空を夕焼け色に染めていくのを見ていた。
眩しいくらい真っ赤な空が、すごく綺麗で。
…詩織さんと付き合うのが、佐伯先生にとって1番の幸せかもしれない。
私が隣にいたら、無理させてしまうのかもしれない。
一度気づいてしまったら、そう考えずにはいられなかった。



