佐伯先生の優しすぎる嘘




「杏奈ちゃん、もしかして蒼のこと好きだったりする?」





唐突なその言葉に、思わず目をみはる。




「え、何で…」

「ふふ、女の勘?」




もしかして図星だった?と無邪気に笑う詩織さんは、遠くを見つめるように顔を上げる。




「蒼に本気になるのはやめた方がいいと思うよ。

…まあ、教師と生徒だしそうなることはないか」




その言葉は棘みたいに私の心を刺す。

北風が吹いて、私たちの髪を揺らした。




「…なんで、ですか?」



「蒼は、優しすぎるから」




そういった瞳には涙が浮かんでいた気がした。


切なげな横顔はとても綺麗で、2人の思い出もきっとそれくらい綺麗なものなんだろう。


その温かい温度は、空気感は、今でも2人の間に残っているのかもしれないと思った。