佐伯先生の優しすぎる嘘





『不安がるような理由じゃないよ』


「じゃあ何で…」



『それも卒業したらね』




何でだろう。

意味が分からないけど、佐伯先生の声が穏やかだから、優しいから。


不安になることは特になかった。






『そういえば、水島さん進路調査出してないよね?』



…う。


不安なのはむしろそこだったりして。





「ごめんなさい…」


『…悩んでる?』



「はい…」





そう、進路調査をまだ出せずにいる。

机の上にあるクリアファイルに挟まれた、進路調査のプリントに目を向ける。


何も書いていないプリント。





『水島さんは東京の大学に行くのかと思ってたけど…』



「…やっぱり、そうですよね」




多分、みんなそう思ってるんだと思う。


私だって漠然とそう思ってた。



でも、佐伯先生と離れるの?


東京の大学に行くなら東京に引っ越さなきゃいけない。


ここから東京までは、そこまで遠いわけじゃないけど気軽に行けるほどの距離でもない。



佐伯先生と一緒にいられないのは、何よりも嫌で…。