佐伯先生の優しすぎる嘘







「あの、佐伯蒼…先生っている?」



そんなことを聞かれたのは、その日の放課後だった。


帰ろうとして校門を出ると、突然話しかけてきたのは綺麗な女の人。


…あれ、ていうかこの人って…。




「もしかしてこの前ぶつかっちゃった人?」



すごく可愛かったから覚えてる、なんて先に口を開いたのは彼女の方で。

私もやっぱり、と呟く。


クリスマス前、道を曲がったところでぶつかってしまった、可愛くて綺麗なお姉さんだった。


私もこんな風に大人っぽくなりたいって思ったんだよね。





「…あっ、すみません、何でしたっけ?」



偶然の再会に驚いて、話を忘れてしまった。




「この学校に佐伯蒼って先生、いる?」





「え…はい、いますよ」



そう告げるとすごく嬉しそうに、だけど同時に切なげな表情を見せた。




「あの、彼に用事があって…」



その言葉に被せて、私の後ろから聞こえた声。



「詩織?」




見覚えあるその名前が私の心を揺らす。




「蒼っ…!」




“元カノ”


いつかの佐伯先生の言葉が、私の鼓動を早くする。




泣きそうな瞳で佐伯先生に抱きついた綺麗な女の人を、私は何も言えずに見ていた。