「はーい、席ついて」
珍しく授業開始のチャイムが鳴ってすぐに、佐伯先生が教室に入って来た。
その首元には私があげたネクタイがあって、思わず頬も緩む。
「冬休み明け最初の授業だけど寝ないようにね」
と言いながら教科書を開く佐伯先生に、クラスの女の子が、
「先生、そのネクタイいつもと雰囲気違って似合う!」
と言うと、みんなも本当だ、可愛い、なんて口を揃えて言う。
「もしかして彼女からのプレゼントとかですか!?」
鋭い言葉に思わず心臓が跳ねる。
「そうだよ」
なんてサラッと言う佐伯先生に、もっとドキドキして。
きゃー!と盛り上がる教室。
誰も、私があげたなんて思わないんだろう。
佐伯先生と目が合って、私の首元にハートのネックレスを見つけた先生が優しく笑った。
ふたりきりの秘密は、何だかキュンキュンして幸せだ。
「はい静かに、授業始めるよ」
クリスマスを一緒に過ごして、あんなに近くにいた人が授業をしてるのは不思議な感じで。
あの人とキスしたんだ、って思ったら何か急に恥ずかしくなって。
佐伯先生が先生じゃなかったら、私が生徒じゃなかったら、普通の恋ができたかもしれない。
クリスマスだって堂々とイルミネーションを見に行って、手を繋いで街を歩いたりできたかもしれない。
だけど、でも。
佐伯先生が先生で良かった。
私が生徒で良かった。
先生と生徒じゃなかったら分からない幸せが、たくさんあるから。
そう思わせてくれる佐伯先生が大好きだ。