佐伯先生の優しすぎる嘘





キーンコーンカーンコーン…





5限目開始のチャイムが鳴り、皆が喋るのをやめて席に着く。


そしてちょうど2分後。



「はーい、号令かけて」



古典の教科書を肩にポンポンやりながら教室に入ってきたのは、佐伯先生。



「気をつけ、礼」


日直の号令によって始まった授業。




「えーと、じゃあ教科書13ページから…」



そんな声も、好きで。

教室をぐるりと見回した時に、たまに合う目も、好きで。

黒板に書くその綺麗な文字も、好きだ。




授業が始まって20分。

ぐー、と鳴った誰かのお腹の音。



その音が聞こえてきた方向にいるのは、佐伯先生で。



「先生、お腹すいてるのー?」
「お昼食べなかったんですかぁ?」
「可愛いー!」


きゃー、という声と、笑い声。

お腹なっちゃうとか可愛いけど、でも!


…それってもしかしなくても、私のせい…。