「ち、違うよ!」
「隠さなくてもいいじゃんー!
私も今日デートだし」
「え、桃果彼氏できたの?」
「言ってなかったっけ?」
聞いてないよ!
佐伯先生のことはもうすっかり諦めたらしい。
…というかそもそも、恋というより憧れだって気付いたらしい。
「佐伯先生に振られて落ち込んでた時に慰めてくれたんだぁ」
まあ、幸せそうで何よりだ。
白いワンピースを着て、甘いメイクもバッチリの桃果は可愛い。
「あ、そろそろ時間だ!行ってきます!」
お姉ちゃんも頑張ってね、とバタバタ部屋を出て行った桃果。
時計を見ると、5時。
あと1時間かぁ…。
長いなぁ…。
楽しみなことを待っている時間は、いつだって長く感じる。
時計の秒針が一周する60秒間でさえ、やけに遅い気がする…。



