…もっと、近付きたい。
そう思って佐伯先生のネクタイを掴んで引き寄せる。
驚いて目をみはる佐伯先生の顔が近付く。
佐伯先生の頬に軽く私の唇が触れて、そしてドアに手をかけた。
「き、今日はありがとうございました!」
自分のしたことが急に恥ずかしくなって車から降りようとすると、後ろからふわりと抱き寄せられた身体。
「佐伯せんせ…」
「…馬鹿、帰したくなくなる」
耳にかかる吐息にビクッと反応してしまう。
後ろから、耳元で囁かれた言葉に胸が苦しいくらいにキュンとした。
「あ、の…」
ドキドキして、いっぱいいっぱいになる私をパッと解放して、
「…なんて、ドキドキした?」
振り返ると満足げにニヤリと笑う佐伯先生。
「っ…!」
「不意打ちで可愛いことするから、仕返し」
フッと笑う佐伯先生はやっぱり私よりも大人で、一生敵わないのかもしれないと思って。
まあそれでもいいかな、なんて思った。
遠ざかる車を見えなくなるまで見送って、家に帰ったら佐伯先生から『おやすみ』ってメッセージが届いてて。
この幸せがずっと続けばいいって、心の底からそう思った。