佐伯先生の優しすぎる嘘




「じゃあひとつずつ!
佐伯先生どっちか食べてください!」


「いいから、チョコのお礼」


「えー…」



チョコ、って、昨日の?

私、名前なんて書いてないのに。
チョコ置いたなんて言ってないのに。

私だって気付いてれたの?



驚いて、嬉しくて、にやけた顔を隠そうと俯く私の頭を、ポンポンと撫でた佐伯先生の大きくて綺麗な手。



「え、」



「どうせお弁当あげたんでしょ?
本当、もう少し自分のことも考えろよな」




頭を撫でて、そのままこっちを振り向かずに行ってしまった佐伯先生。



「な、に、それ…」



ずるい、ずるい、ずるい…。


心臓がドキドキしすぎておかしくなりそうだ。


何で、気付いてくれるの?

何で、何で、こんなに好きにさせるの?


好きって告白も、聞いてすらくれないくせにー…。



ああ、もう、だって、こんなの…


好きになるしかないじゃん…。



佐伯先生の手の温もりが少しだけ残る頭にそっと触れて、何故だか少し泣きそうになった。