「…わざとゆっくりやってたの?」
「ごめんなさい、でも私、佐伯先生とー…」
返ってきたのは、想像以上に冷たい口調だった。
「…まず水島さんの迷惑を考えるべきじゃないの?
君の仕事が遅いせいでどれだけ負担かけてると思ってる?
自分の分にプラスして君の仕事もやってくれてるの、知ってるでしょ」
低いトーンの声に、びっくりしたのは私だけじゃなくて真奈ちゃんもで。
…ていうか佐伯先生、私が真奈ちゃんの分もやってたの知っててくれたんだ…。
「で、でも水島さんは頭いいし、あれくらい1人でも余裕でー…
1人であんなに何でも出来ちゃうの、男ウケしないと思うんですよね!」
慌てたように言う真奈ちゃんに、胸が痛む。
…確かにそうだ。
出来ないよりは、出来る方がいいに決まってる。
だけど、でも、男の人からしたら。
…守ってあげたいと思うのは、出来ない方だよね…。
「俺が毎日手伝ってたのは、水島さんのためだよ。
君の仕事が終わらないと水島さんが無理するでしょ。
迷惑かけておいて人のこと馬鹿にするような子が男ウケすると思ってるの?」
冷たく言い放ったその言葉に、目の奥が熱くなった。
ぽろ、とこぼれた涙が、手元のプリントを濡らす。



