佐伯先生の優しすぎる嘘




その笑顔だけで、十分だったけど…。



次の日も、その次の日も、佐伯先生は真奈ちゃんを手伝ってる。


いくら彼女だからって、そんなことにモヤモヤしてたらキリがなくて。

だけど、でも。



私も同じ教室にいるわけで、どうしたって向かい合う2人が目に入って。





「ここ、2組より3組が時間に余裕あった方がいいんじゃない?」


「あ、本当だ…ありがとうございます!」




…なんで毎回、真奈ちゃんなんだろう。

せめて1回くらい私の方気にしてくれたっていいのに。



「…」





ダメだ、ここにいるとどんどん自分が嫌なやつになる。



ガタッと椅子を立つと、その音に2人が同時に振り向いた。





「…これ、コピーしに行きます!」




プリントをまとめてペンケースを掴んで、バタバタと教室を出た。





「はぁ…」




廊下を歩きながらため息をつく。



…不安なんだ。




佐伯先生が、真奈ちゃんを好きになっちゃったんじゃないかって。


分かってる、佐伯先生は先生だから。

生徒と喋ってるの、ひとつひとつに嫉妬なんかしてたらきりがないってことも。



だけど、でも…。



佐伯先生が私のことを好きだっていう自信がないから。

ずっと好きでいてくれるっていう自信がないから。



だから、些細なことで不安になる。



私に飽きたら、振られちゃうんじゃないかな。

佐伯先生は大人だから、子供な私なんかすぐに面倒になるんじゃないかな。



くしゃ、と皺の入ったプリントに、手に力が入っていたことに気づいてまたため息を吐いた。