佐伯先生の優しすぎる嘘





「水島さん、購買?」



思いがけず、向こうからかけられた言葉。

それは嬉しいんだけど、でも。


昨日のことなんて何も気にしてないような、いつも通りすぎる態度に少しだけ寂しくなる。





「あ、お弁当忘れちゃって」


へへ、と笑う。

…恥ずかしい。

大人になりたいって思ったのに、お弁当忘れたなんて子供みたいだ。


違うんです、妹が忘れたんです…なんて、わざわざ言えないけど。

まあ、そんなのはいつもの事で。

桃果のフォローをするのが私の役目みたいに思ってたから、もう慣れっこだ。