佐伯先生の優しすぎる嘘





「あ、そろそろ時間」




腕時計を見た佐伯先生が呟いた。

もう時間か…。

もうちょっと一緒にいたかったなぁ…。




「水島さん、先戻って」


「あ…そっか」




2人で戻ると怪しまれちゃうかもしれないもんね。


そう思って先に立ち上がる。




「佐伯先生、ありがとうございました」



私が嫉妬してたから、わざわざここまで連れて来てくれて。

こんなに幸せな気持ちまでくれて。



優しく笑った佐伯先生に、心がふわふわした。





みんなのいる方のビーチに戻ると、夕羽がニヤニヤしながら駆け寄って来た。




「杏奈ちゃん、何してたのかなぁ?」


「いや、その…」




思い出しただけで顔が赤くなるのがわかる。



「もー、後で詳しく聞かせてよ!」

「う、うん…」





チラリと後ろを振り返ると、佐伯先生が向こうから戻って来ていた。




目があうと、笑ってくれる。

その瞬間ドクンと鼓動が跳ねる。




「時間だから着替えてこーい」




みんなに指示するその背中が、好き。



あの人とさっきまであんなに近くにいたんだ。


そう思うと嬉しくて、幸せで、ふわふわする。