「お姉ちゃーん!」
4時間目の授業が終わり、昼休みに入った瞬間。
そんな叫び声とともに、泣きそうな桃果が教室に駆け込んできた。
「わっ、どうしたの?」
「お弁当忘れちゃった…」
「…忘れ物しすぎじゃないの?」
「ごめんなさいぃ…」
大きな目を潤ませて言われたら、それ以上怒ることもできずに…。
「私のあげるから、次から忘れないでよ?」
なんてお弁当を渡してしまう私は、やっぱり桃果を甘やかしすぎてる気がする。
「え、でもお姉ちゃん…」
「購買で買ってくるからいいよ」
「わーん、ごめんね!ありがとう!」
お姉ちゃん大好き、なんて抱きついてくる桃果。
本当に調子いいんだから、なんて思いながらも財布を持って購買に向かった。
「…あ、」
購買に行く途中の廊下で、向こうから歩いてくるのは佐伯先生。
大好きな人の姿を見間違えるはずもなくて、ドクン、と心臓が跳ねた。
…昨日の今日だし、どんな顔すればいいんだろう。
頭ではぐるぐる考えても、二人の距離はどんどん縮まってしまう。



