「もう素直に聞いちゃえばいいのに」
あの後、全部を話してある夕羽が耳打ちする。
「…言えないよ」
忘れてって、言われたら怖いもん。
佐伯先生のことをさっきから何度か見ているけど、一度も交わらない視線。
少しうつむいて、今日のために買った白のワンピースを見る。
大人っぽくて可愛くて、佐伯先生に見て欲しくて。
少しでも、大人な彼に追いつきたくて。
…気付いて、ないよね。
みんな私服なんだから、私の変化なんて気付いてるはずはなくて。
寂しいな…。
そもそも、あれから一度もまともに話していないのが答えなのかもしれない。
もうダメなのかな?
と、佐伯先生が振り返ったせいで絡んだ視線。
突然のことに驚いて、慌てて目をそらしてしまった。
ああ、逸らしちゃった…。
でも、ずっと見てたって思われたらひかれちゃうかもしれないし…。
もう一度ゆっくり佐伯先生の方に視線を戻したけど、他の生徒と話す背中しか見えなかった。