「わ、暑い!」
「すごーい!」
飛行機から降りた皆が次々に歓声をあげる。
そう、ここは沖縄!
修学旅行です!
私も夕羽と一緒に飛行機を降りて、10月なのに夏みたいに暑い空気を吸った。
みんなで騒いでいるだけで、こんなにも楽しいのは修学旅行のテンションのせいだ。
…でも、ひとつだけ、私にとっては一番大きな問題が心に影を落とす。
ちらり、と飛行機に目を向けると、生徒たちに早く降りなさい、と誘導する佐伯先生。
あの文化祭の日から、代休とか、修学旅行の準備とか、バタバタとあっという間に過ぎた時間のせいで、私たちの関係は曖昧だ。
先生たちももちろん修学旅行の準備に忙しいし、学級委員の私も班を分けたりコースの日程を考えたりと大変だった。
…まあ、いちばんの理由は、私の勇気がなかったせいだけど。
佐伯先生は、私を好きって言ってくれた。
確かにあの時の唇の温もりだって本物だった。
だけど、でも。
付き合おうって、言ったわけじゃない。
佐伯先生だって雰囲気に流されただけかもしれない。
生徒と付き合うなんて、佐伯先生は考えてすらいないかもしれない。
そんな想像だけが膨らんで、私の勇気を壊す。
…私は、付き合いたいけど。
だけど佐伯先生の迷惑になることは絶対したくない。
だったらやっぱり、あの日のことは忘れて今まで通りにした方が良いのかな?
勇気がなくて、ずっとずっと聞けなくて時間だけが経って、そのせいでもっと聞きにくくなってしまった。