佐伯先生の優しすぎる嘘





「プリント…出さなきゃ」



頬に伝った涙を手の甲で拭って、教室に向かった。




「おかえー…って、どうしたの?!」


私の泣き跡を見て驚く夕羽に、あはは、と笑ってプリントを手に取る。


「職員室、行ってくるね!」



…これくらいで、諦めてあげないから!

どうしたって、佐伯先生がいいんだ。

佐伯先生じゃなきゃ嫌なんだ。


頑張りたい。

頑張って、佐伯先生を振り向かせたい。




諦めたほうがいいかなって、思ったりもするけど。

でも、そう思うと、恋に落ちた瞬間を思い出して。

どうしても佐伯先生がいいんだって思い知らされて。



どうやっても私の頭から消えてくれない佐伯先生は本当にずるくて。




一度拒否されたくらいで、やめられるような気持ちじゃないから。



「失礼します!」



職員室に入って、佐伯先生の机にプリントの束を置く。


そして隣に、ビターチョコレートも。

…疲れが少しでもとれたらいいと思う。




今はまだ私に興味の欠片もなくたって、



大人な貴方に、



いつか好きって言わせたい。