佐伯先生の優しすぎる嘘





「私が心配だから、探してくれてたんですか?」



「…そうだよ」



その声は、思ったよりも近くで聞こえる。




「お祭りの時、七瀬くんにヤキモチ妬きましたか…?」



佐伯先生は、答えなかった。

だけど私から目をそらした。




「さっき連絡先を聞かれてたのを助けてくれたのは、教師としてですか?」



下を向く佐伯先生の表情は、眼鏡と髪のせいで見えない。




「…佐伯先生が怒ったのは、私が自分の心配をしないからですか…?」



「…うん」



何を、考えているんだろう。
どんな表情、してるんだろう。


それは佐伯先生の黒縁のレンズが邪魔して見えない。






「佐伯先生、私のこと…」





もう、どこが心臓なのかもわからないくらいに全身がドキドキして、胸が苦しい。







「…好きなんですか」








佐伯先生は、何も答えてくれない。


私も答えてくれるまで、どいてあげない。




カチ、カチ、と秒針の音だけが響く。