佐伯先生の優しすぎる嘘





「俺も、それくらい好きにさせられたら良かったな…」





ポツリと、届くか届かないかくらいの小さな声で。

それは多分独り言だけど、私の耳には確かに届いた。




「っ、ごめん…」




傷付いた顔が見たかった。


そうさせてしまったのは私だったのかもしれない。



確かにあの時私は斗真のことが好きだった。


でも、佐伯先生に抱いている気持ちほど大きかったかと考えたら、よく分からなくて。





でも、だけど、手を繋ぐだけでドキドキして。

キスなんか恥ずかしくてできなくて。


それくらい斗真のこと好きだったのも、本当だ。






「…ありがとう、大好きだった」




驚いて顔を上げた斗真は、今まで見たことないくらい優しく笑った。


これは本音を隠すための笑顔じゃなくて、本当に、心からの笑顔だったと思う。





「…ごめんね、いろいろ。
俺も大好きだったよ」






くしゃ、と私の髪を優しく撫でて、



「アイツに振られたら俺と付き合う?」




なんて笑うから、私もつられて笑ってしまう。



手を振りながら教室を出て行った斗真に、やっと初恋を綺麗に終わらせられた気がした。