佐伯先生の優しすぎる嘘




「で、何?」




空き教室に入るなり私から切り出す。

みんなが文化祭に夢中なせいで、空き教室や資料室ばかりのこの通りに人気はない。





「これで会いに来るの最後にするから」





願いが通じたのかもしれない。

パアッと明るくなった私の顔に、たぶん斗真は少し苛ついた。





「最後にひとつだけ聞かせて」




トン、と教室の壁に押し付けられ、斗真は私の顔の横に手をついた。




「さっきの奴、先生でしょ?

…アイツのこと好きなの?」




何も言わずに下を向く。

私のことを嫌ってほどよく分かっている斗真は、肯定だと判断したはずだ。





「優等生のお前が、そんな最大の校則違反していいの?」






今の斗真には、余裕がない気がする。

…何となく、だけど。

こんなに近くで見る斗真は、何だか泣きそうな目をしていて。





「うん、叶わなくても、あの人以外好きになれない」





そうキッパリ言い切った。


中学生の時の私は、好きとか嫌いとか、ハッキリ言うのが苦手だったかもしれない。


だからか、斗真は少し驚いて目を見開いた。




「へえ、面白いこと言うようになったじゃん」




ははっ、と笑って手を離し、私を壁と彼の間から解放した。