佐伯先生の優しすぎる嘘





「ふーん、それが好きな人?」





ゆっくり喋る意地悪な声は、絶対…。




「斗真…」




どうしてこう、次から次へと気が休まらないんだろうか。


本心のわからない笑みを浮かべている斗真は、ちょっと来てよ、と続けた。




「あ、ちょっと今忙しいから!」




あんみつの入ったお皿をお客さんに渡す。



「そいつと抱き合うのに忙しいの?」




ニヤッと笑う斗真が、本当に本当に嫌いだ。

何でこんな人のことが好きだったんだろう、なんて今になって思う。





「杏奈、用あるならシフト抜けていいよ!
もう1時間以上続けてやってくれてるし」


「え」



気を遣ってくれた友達だけど、今はちょっとむしろここにいたかった…!




「じゃあ、行くよな?」




これじゃあ斗真の思うツボだ。


はぁ、と溜息を吐いて、先を歩く斗真に着いて行く。


今日で、会いに来るのやめてくれないかな。

ていうか今日まで来ると思わなかった…。





「空き教室とかないの?」


「何で空き教室なの…」



「優等生の杏奈ちゃんが不良みたいな俺と噂されたら可哀想でしょ?

それともされたかった?」



「……2階の渡り廊下渡って右」




満足げな斗真に続いて階段を降りた。