その言葉の意味はすぐにわかって。
でも分かりたくなくて。
好きだって、言おうとしたのに。
言う前に引かれた線に、泣きそうになる。
それ以上何も言わずに、私の横を通り過ぎた佐伯先生の背中を振り返っても、そうするのは私だけで。
佐伯先生は一度だって、後ろを振り返らなくて。
「良い子じゃ、ないよ…」
ポロ、と目から溢れた雫。
こんなことを言った一瞬ですら、私は佐伯先生の頭に残れない。
…早く、大人になりたい。
佐伯先生と同じくらい大人に。
私はただのいち生徒だ。
それを再確認させられた。
佐伯先生が好きだって、自分の気持ちも。



