佐伯先生の優しすぎる嘘






「別れる時さ、桃果のこと好きになったって言ったじゃん」



しばらくの沈黙の後、やっと口を開いたら、1番したくなかった話で。


私の中ではもうその話は解決しているんだから、傷をえぐらないでほしい。




「桃果のこと好きになったのは嘘だったんだよね」



「…へぇ」




どうせこの人の言っていることの8割は気まぐれだ。信用できない。


そう思いながらも、若干動揺してしまった自分が悔しい。





「だって桃果に告白とかしてねぇし」




斗真が蹴った石が、転がって下水道にカランと音を立てて落ちた。

…確かに、あんな振り方をしたならすぐに桃果に告白してもいいはずだ。


だけど桃果からそんな話は聞いてないし、他の人からも…。


別れた後どうしても気になって、さり気なく桃果に聞いたことがあるけど、桃果は斗真のことすらあまり知らないみたいだった。





「じゃあ、何で…」




「杏奈が好きだから」



あまりにもサラリと口にされたその言葉は、行動と全く噛み合っていない。