佐伯先生の優しすぎる嘘






「アイツ本当に許せない、嘘って何、人間としてどうなの?」




私の分まで怒ってくれているような夕羽を、なだめる。





「…私、斗真のよく分からないところが好きだったんだ」





放課後の人気のない教室で、夕羽はカフェオレ、私はミルクコーヒーを飲む。



「本心がわからなくて、分かりたいって思って、それで…」



甘いはずのミルクコーヒーはいつもより苦くて、窓から吹く風は暑かった。





「斗真は私のこと、好きだったのかな」




その質問に夕羽は答えなかった。

代わりに教室のドアが開いたから。




「まだ残ってたのか、早く帰りなさい」



ドクン、と脈打った心臓に、どうしたってこの人のことが好きなんだな、と確認させられる。


あの日以来1度も喋っていない佐伯先生の目を見れなくて。

私にはまだ答えが見つかっていなくて。

斗真のことも頭から離れなくて。


私の脳内はぐるぐるしてた。




他に何も言わずに、特に何もなかったみたいに教室を出て行った佐伯先生。


その背中を呼び止めることも、今は出来ない。


夏の気温と私の手の体温のせいですっかりぬるくなったミルクコーヒーは、あまり美味しくなかった。