佐伯先生の優しすぎる嘘




次の日も、そのまた次の日も現れた彼は、暇なんだろうか。





「あんた、何考えてるの?
杏奈のこと傷付けたら許さないよ」




見かねた夕羽のその言葉にも動じない。




「まだ根に持ってんの?
俺が振ったこと」




今にも彼に殴りかかりそうな夕羽を必死に止める。



「気にしてないし、斗真のことは私の中で終わってるから」




淡々とそう告げる。

風が蒸し暑い。





「実は俺、病気だったんだ」


「は?」


「このまま杏奈と付き合ってても、杏奈のこと幸せにできないから。

だから1番嫌われる振り方で、終わらせようと思った」





いつになく悲しそうな表情に、思わず心が動かされる。






「ー…まあ、嘘だけど」






口角を上げて、楽しそうに笑う彼を心の底から睨んで、何か叫ぼうとする夕羽の腕を引いてその場から逃げる。



そうだ、彼はそういう人だった。



何を考えているか分からない。


何も、考えていないのかもしれない。




だけどそんな彼のことをもっと知りたかったんだ。


ふわふわと飛び回る蝶々みたいな彼の自由さは、いつも悩んでいる私を救ってくれた。