「…何だろう」
夏休みが終わった。
夏の間涼しい服ばかり着ていた私にとって、ネクタイまで結ばなくてはいけない制服は地獄のよう暑さだ。
同じく、暑い暑いと嘆く夕羽が前の席でサイダーを飲む。
「うーん…」
佐伯先生に怒られたあの暑い日から、何日経ったんだろう。
佐伯先生が怒った理由をずっと考えていたけれど、どうしても答えにはたどり着けなくて。
家に帰ってから、佐伯先生から事情を聞いたらしい桃果に泣きながら謝られた。
佐伯先生に告白しようとしたけれど、手紙を受け取ってもらえなかったらしい。
その手紙を廊下に落としてしまう桃果は本当にドジだけど、何の行動も起こせない私より勇気があるから、すごいと思う。
「それは恋じゃなくて憧れだよって言われて、そうかもしれないって思ったんだ」
だから諦める、と呟いた桃果は、少し寂しそうで。
ラブレターは佐伯先生への憧れの気持ちだったということで、特に問題になることもなく、平和に2学期が始まった。
佐伯先生が何か言われることもなかったらしい。
あの日は、この夏1番の猛暑だったって、天気予報が言っていた。



