誰かの足音に気が付いて、慌てて涙を拭うけれど拭ってもまた溢れてくるそれに諦めて膝に顔を埋めた。
この際、私だって分からなければいいから、早く通り過ぎて…!
そう願っているのに足音は何故か私の前で止まり、目の前に影を落とした。
「自分のことも考えて行動しろ、って言ったよね?」
いつもより低いトーンで、明らかに怒りを含んだその声に顔を上げると、初めて見る怒った佐伯先生がいた。
いつもニコニコしているのに、眼鏡の奥のその瞳は冷たい。
佐伯先生の顔を見た瞬間、何故だか更にポロポロと涙が溢れてしまった。
「これ」
私の手から涙で濡れたピンクの封筒を奪う。
「俺、桃果さんから渡されて、受け取れないって断ったんだけどさ」
渡したんだ、桃果…。
「何で水島さんが持ってるわけ?」
その質問の答えなんて分かっている上で聞いている佐伯先生の声には、威圧感があって下を向く。
「何でこんなことした?」
「ごめ…なさっ…」
迷惑、かけた…。
自分がいいと思ってやったことだって、結果的に佐伯先生の迷惑になったら意味ないのに…。
きゅっと目を閉じると、またひと粒溢れた温かい雫。



